丸太からチェンソーだけで彫り出すアートがまるで魔法!
チェンソーだけを使った、ダイナミックな彫刻、チェンソーアート。一本の丸太から、生き物を彫りだす様子は魔法のよう。その出来上がりだけでなく、作り上げていく様子もパフォーマンスとして楽しめる。
そんなチェンソーアートを愛好し、栃木県日光市で日光チェンソーアートクラブを主宰している、阿久津金次さんを尋ねました。阿久津さんは、はじめて15年のベテラン。もとは林業をしていました。
「細かいことはいいから、まず見てよ」といいながら、阿久津さんが転がして運んできたのは杉の丸太。まだ、伐採してそれほど日がたっていない材です。長さ1.3メートル、太さは30センチくらい。
その木を立てて正面を決める阿久津さん。この木が生えていた所は、冬には雪が降りとても寒くなるため、木が凍ってしまいます。凍ったところにはヒビが入ってしまい美しくありません。そのような面は後ろに持ってくるのです。
今回、彫っていくのは知恵の象徴や福を招くなどといわれるフクロウ。幸せの鳥です。
イメージができたのか、「よし」とうなずくと、下絵も描かずにいきなりチェンソーのエンジンをかけ、大胆にスパッと木の角を落とします。「ひとつ歯を入れれば、あとは自然に決まっていく」とのこと。数をこなしているので、形を覚えているのでしょう。1年に制作するのは、100体を超えると言います。
角を落とすと、木の白い部分と赤い部分の境目が見えてきます。この線を利用するのがミソなんだそう。その線を見ながら、いろいろな角度を決めていきます。
あっという間に大雑把な形ができてきました。と思ったら、フクロウの背中を真っ二つにするように、深い切り込みを入れてしまいました。え、せっかく作ったのに、なんで!?実は、伐採したばかりの木はたくさんの水を含くんで膨張しています。それが乾いて水が抜けると、繊維が縮んで引っ張り合いひびが入ってしまいます。そこで、先に割れ目を作っておくことで、木が縮んでも力が抜け、顔の真ん中などに割れが入ってしまわないようにしているのです。
あらかた出来たら、チェンソーを歯が少し細いものに変え、さらに彫り込んでいきます。阿久津さんがチェンソーで軽くさするだけで、羽の模様が浮かび上がってきます。重く震えるチェンソーが、まるで彫刻刀のよう。
このフクロウは看板としてもとても人気で、彫刻の下にお店の名前を入れられるのです。名前を入れる部分は表面をカットし、板のように平らにしていきます。ここでも、技が炸裂。チェンソーをスライドさせて、きれいな平面を作り上げてしまいます。これは、ブラッシングというもので、ログハウスを作るときには必須の技術。カンナが使えない面でも、きれいになってしまいます。
あとは、この面に文字を彫り、塗装を施して完成です。
首をかしげて、こちらを見るフクロウがかわいい。阿久津さんの人柄がにじみ出るようです。ここまでかかった時間は45分。みていても楽しめるのであっという間です。
阿久津さんは、近辺のイベントでチェンソーアートを披露しているので、機会があればぜひ。一つ家においておけば、きっと福が舞い込んできますよ!
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