すべては繋がっている。飛騨の地で共存循環型農業を目指す画期的な会社「スピリット」
岐阜県高山市、乗鞍岳を眺められる丘に株式会社スピリットはあります。社長の藤原孝史さんは、「畜産は臭い」という常識を変えるために30年近く飛騨の地で研究を続けてきました。昨年2013年には会社として立ち上げ、畜産を軸にしながら、農業・林業などを密接につなげる、循環型の総合農場を経営しています。
右から増田さん、藤原さん、山本さん
今まで、牛糞の肥料は使いづらいものとされていました。糞を発酵させ、肥料として使えるまでに1年近くもかかり、また、牛に消化されなかった牧草の種が、畑に入れると芽をだしてしまうこともありました。
株式会社スピリットはこれらの問題を“乳酸菌”を使うことによって解決しました。使ったのはバイオバランスという乳酸菌資材です。これを、普通のえさにまぜて食べさせることにより、牛のお腹でしっかり食べ物が消化され、胃・腸から健康にしたのです。しっかりと消化されてでてきた健康な糞は、ニオイもなくなりました。このバイオバランスを提携した牧場で使ってもらい、その糞をこの会社が回収して肥料にしています。いまでは、このバイオバランスを与えられた牛の乳が牧成舎の白の命というブランドで販売されています。
与えられた乳酸菌は糞にも残り、これがよい堆肥になる手助けをします。いままでは、糞を空気と混ぜ、空気中の菌を利用して発酵させていました。そのため、完成までに1年かかり、頻繁に混ぜることが必要だったのです。しかし、この糞はもともと含まれている乳酸菌のおかげで、積んでおくだけで発酵をします。また、通常の方法では菌の活動によって温度が70度を超え、有用微生物が死んでしまっていましたが、乳酸菌の場合60度程度までしか上がらず、微生物を生かしたまま使えるのです。そして、たったの3ヶ月で畑に入れられる状態になるのも大きなメリットです。
しかし、この会社はそれだけではありません。堆肥を作るには木材のチップも必要です。これを、山の管理もすることにより間伐材を割り箸として活用し、その過程ででるオガクズやカンナクズを活用しているのです。
できた堆肥を生かして、みな土農場という農園も運営しています。現在、野菜やオレガノやレモンバームなどのハーブをあわせて40種類ほど作っています。とても好評で、今はレストランに卸しているそう。これからはブランドとしても展開していくとのことです。
畜産、農業、林業、食など、すべてを強く結び、大きな相乗効果を生む。
これらの取り組みは、最後は都会のレストランで消費者のもとに届きます。牛のミルク、鳥の卵や豚、その糞からできた野菜、間伐して作ったわり箸、すべてが使われるのです。
藤原さんはそれを通して、都会の人が自然や持続可能な社会に関心を持ってくれたらいいと考えています。
みんなが健康になり、ムダが無く、地球にやさしいこの取り組みが、もっと世の中に広まったらいいと思いますね。
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